真夏の夜の夢 〜モンスター・ヒラスズキ〜

 自分の釣り人生の中で、とにかく無我夢中になって追いかけた魚・・・それがヒラスズキです。

 ヒラスズキという魚の存在を知ったのは80年代中頃、今はなき「フィッシング」という雑誌のグラビア上でのことでした。
 そこで取り上げられていた尊敬すべきシーバスの大先輩F・W両氏の外房ヒラスズキゲームの記事を目にして以来、ヒラスズキの美しい魚体や、なかなか釣れない希少性・荒天時の荒磯の大ザラシに立ち向かっていく自己陶酔感や、狙った場所で大型を釣った時の身震いするほどの恍惚感など、ヒラスズキという魚に完全に魅せられて、長い年月、ヒラスズキにはどっぷりとはまっています・・・。

 近年では同じ磯魚でも石物釣りが多くなって、ヒラスズキからは足が遠のいていますが、ヒラスズキ釣りから得た貴重な経験や孤高のヒラスズキ仲間達との交流は、私の宝となっています。

 ここで、私にとっておそらく一生忘れ得ない人生最良の夜・・・
巨大ヒラスズキをキャッチした、ある真夏の夜のストーリーをご紹介したいと思います。



 その頃の私は、「魚=ヒラスズキ」というくらいヒラスズキ症候群で、90センチ上の夢の大物に憧れて、狂ったように伊豆半島に通っていました。大物の夢実現のために、週2釣行を繰り返していました。

 あるポイントに照準を合わせてから連続ボーズも15回を超え、前回はまったくカスりもしなかったことから、これまでの強行軍=「往復計4時間のロングドライブ」+「釣り時間は2時間弱のみ」というクレージー釣行に迷いが出始めていました。しかし「大物を狙うなら、この時期のあの場所しかない!」との信念の下、初志貫徹を誓い、邪念を振り払って横浜の自宅を出発しました。

 今でもハッキリと覚えていますが、目的地に向かう夜のドライブの最中に雨が上がり、ちょっとモヤがかかってきて、釣り師の第六感というべきか「今夜は大型が釣れそうな気がするナ」と車中で感じました。

 大急ぎで到着したポイントは、平日の晩だったこと、そして伊豆半島のヒラ師がまだ少ない時期でもあり、予想通り貸切状態。はやる気持ちを押さえつつ、そそくさと準備を済ませて早速釣りを開始。車中で感じた第六感とは裏腹に、キャストを続けてもやはりノーヒット。もうこうなると釣果はどうでも良くなってきて、波をかぶりながら満天の夜空の下、ただそこで独りで釣りをしているだけで自然との一体感を感じ、恍惚感に包まれてしまう・・・。

 まるで機械になったように「来るならここ!」と自分で予想したコースを何度もキャストしてはリトリーブを繰り返していた。車から2つ持ってきた信頼のルアーのうち、今まで投げていたアスリートF14からトップウォータープラグのK−TENリップルポッパー115にチェンジ。
 今までそこに魚はいたのか、たまたま回遊してきたのか、ルアーを変えてしばらくして「バシャン!」と1回出たものの、これは乗らず。感じからしておそらく60センチ級の中型。悔しかったが「自分の狙いはもっと大型」と無理に納得させて続行。魚の気配ムンムン。

 その後数投目に運命のヒット!波間を泳ぐリップルポッパーが巨大水柱とともに消えて一呼吸おいてフッキング!ファイトが一筋縄ではないのですぐに大物であると確信し、無我夢中・・・魚に対しどのようないなしやファイト法をとったのかほとんど覚えていないが、とにかく竿一本まで寄せたときに見たその巨大な魚体に「落ち着け!バラすなよ・・・」と自分を鼓舞させたことだけは覚えている。

 ランディングした時は膝がガクガクと武者震いして、誰もいない深夜のポイントで波にズブ濡れになりながら「やったー!」と拳を突き上げ大絶叫しました。その場で急いで写真撮影や計量をしましたが、その場では97cmの9.1kgありました。好条件のこと、続行すれば追釣できたかもしれませんが、達成感・満足感でどうでもよくなり、ポイント近くで大の字に横になって、この魚に辿り着くまでの10数年間のヒラスズキ釣りの苦労等を走馬灯のように回想しつつ、とても贅沢な小1時間を過ごしました。
 夜釣りの最中に見上げても何とも思わない流れ星も、この時の晩だけは、恥ずかしながらセンチメンタルな気分で見上げた記憶があります(笑)。


 私が休日・平日を問わず、あまりにもしょっちゅう遠くから通ってくるもので、地元の年配ヒラスズキ仲間も半ば呆れ気味でしたが、後日に彼から贈られた「いやぁ岡本君、20数年こんなヒラスズキ見たことないよ。その頑張りぶり、おテントウ様が見てくれてたのかもな・・・」という言葉は今でも心に残っています。

 釣ったモンスター・ヒラスズキと共に小1時間横になって贅沢な時間を過ごした後、再度検量したところ目方が8キロに減っていました。今まで「魚が短縮した」とか「乾燥して軽くなった」など聞いても半信半疑でしたが、そんなこともあるもんだと不思議な実体験をしました。

 唯一後悔していることは、そのヒラスズキをリリースできなかったことです・・・。
97センチにまで成長するのにかかった年月や、自分のルアーにヒットしてくれたことへの感謝、リリースすれば一生自分の心の中で泳ぎ続けることからも、現在では「あの時リリースすればよかった・・・」と個人的に感じています。

 その後、ヒラスズキ熱は更にヒートアップしてしまい、より難しい釣法【フライフィッシング】でヒラスズキを狙う艱難辛苦が始まることになりました。
 



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